近年、オフィス環境をデザインする際に「音環境の改善」に取り組む企業が増えてきています。「会議室の会話が漏れ聞こえてしまう」「周りの話し声で集中できない」など、オフィスでは様々な音環境問題が存在しますが、一般的に集中しやすいイメージが持たれている静かな空間についても、「静かすぎる」環境である場合には注意が必要です。
人は無意識にも何らかの音を探して聞こうとしてしまう習性があるため、音楽が流れているとその歌詞やメロディを追ってしまったり、自分に関係のある話声などが聞こえると理解しようと脳が反応してしまいます。一方、無音の環境では、神経が過敏になりちょっとした物音にも過剰に反応してしまいます。これは、普段私たちは音によって周囲の状況を判断したり、危険を感じとったりしていることに起因しているからで、無音空間は人に孤独や虚無感、大きなストレスを与えると言われています。
また、静かすぎるオフィスは、物音一つ響いてしまう為、人は無意識うちに音を立てないように気を遣います。このような状況下は、行動が制限されてしまい従業員が伸び伸びと仕事をしづらくなったり、ストレスが蓄積したり、結果として全体のパフォーマンスを下げる要因となりかねません。
そのため、図書館のような比較的静かな環境の音(50デジベル以下)よりも、適度な雑音(70デジベル程度)で、かつ、ホワイトノイズや自然音のような意味を持たない音が最も仕事の集中に適していると考えられています。
一般的に、ホワイトノイズは「機密性を保ちたい空間」においては抜群の効果を発揮しますが、居心地の良さの観点から長時間の滞在には向かない特性を持ちます。一方、自然音はその心地良い音に意識が向いて雑音が気になりにくくなること、加えてハイレゾであれば聴こえないレベルの高周波音が脳を刺激することで自律神経が整い、深いリラックスと集中力を実現することが可能ですので、静かすぎるオフィス環境の居心地改善にとても効果的です。
コロナ禍においてオフィスの在り方が問われる今、快適なオフィス環境づくりの重要性が高まっていると言えます。オフィスにわざわざ足を運ぶ意味や価値を高めたり、短い時間で密度の濃い働き方ができる場所を目指すにあたり、音環境の改善は必要不可欠と言えるでしょう。